PRプランナー 妹尾浩二の日記

日々の活動記録

8000メートルからの情報発信

without comments

今、毎日新聞の朝刊に登山家の栗城史多(くりきのぶかず)氏の記事「時代を駆ける」が連載中です。彼はまだ29歳ながらも、世界7大陸の最高峰のうち6P1030588つまでを単独・無酸素で登頂した日本でただひとりの男。単に一人で山に向かうのではなく、企業から協賛金を集めて中継部隊を組織し、世界で初めてインターネットを通じて登山の様子を生中継しながら登る「エンターテインメント登山」という新領域を開拓していることでも話題の人です。記事の内容も興味深いのですが、私は彼の著書を読んだり、彼にまつわる映像をユーチューブで見たりするのが好きで、そのたびに心を揺さぶられます。

私が彼のことを知ったのは、1年半ほど前に本屋で立ち読み中に見つけた、あるアウトドア雑誌の記事でした。身長162センチ、体重60キロ。私よりふたまわりも若く、私よりずっと小柄な青年が、中継機材の入った通常より重い装備を担いで過酷な8000メートル級の山々に挑戦していると知り、どうやって登っているのか、ちょっと興味がわいたんですね。

すぐに同じ店の新刊コーナーにあった彼の「NO LIMIT」という本を買って帰り一気に読みました。

7500メートルを超え酸素濃度が地上の3分の1しかないデスゾーン(死の地帯)で、酸素ボンベを持たずに自分の体力・精神力の限界を超えて一歩ずつ上を目指す。そしてその挑戦の一部始終をインターネットの生中継で地上の人たちに配信する。何の目的があり、彼がなぜそこまでやるのか、読み進んでいくうちにわかってきました。

彼は、単に世界の最高峰を制覇したいという、純粋な登山家とはまた違った夢を持って山に登っているんですね。

「昔、『なぜ山に登るのか』という問いに『そこに山があるから』と答えた登山家がいた。でも僕の場合は、ちょっと違う。生と死のはざまで学んできた『生きる』という力を、同世代の若い人たちにリアルなメッセージとして伝えたい」って。

普通の登山家の目的は、高い山の頂上を極めることで達成の喜びを味わったり、自分の限界を超えた自分に酔いしれたり、多くはそういう「自己満足」の世界です。もちろん栗城の場合も自分自身で喜びや満足を味わう部分もあるでしょう。しかし彼は、達成感や陶酔を自分の中にとどめておくのではなく、より多くの人に伝え、困難に立ち向かう勇気や難関を越えていく元気を与えたいのだそうです。

「登山家の目的は山に登ることで、実際僕は単独で山に登り続けてきた。でも一人では限界がある。共有し、感動を分かち合うのが、本当の冒険だと思っている」

彼は、エベレスト登頂に賭ける思いや、資金集めの苦労や、山での楽しみや人と自然への感謝、そして極限状態での痛みや苦しみ、弱い自分とそれを鼓舞する心の葛藤などを余すところなくメッセージとして、世界の人たちに伝えていきます。

彼が書くことによって本になって多くの人に読まれ、彼が映像を記録しネットで公開することで、下界に居ながらにして登山の過酷さと素晴らしさを知ることができる。特に彼と同年代か若い世代の人たちは、彼の挑戦に勇気づけられる。

そうして情報発信を継続していると、彼を応援し彼の登頂を共に喜びたい人が徐々に増える。次第に登山家・栗城史多としてのブランドが醸成され、次の挑戦のために必要となる資金が集まってくるようになる。彼は情報発信の内容やボリュームが普通の登山家よりケタ違いに多いからこそ、スポンサーとしても露出効果があり、自分自身がそれだけ価値の高いメディアになったと言えるのです。お金を集めることも夢を叶えるには必要不可欠ですからね。

一方で、彼の取り組みに異を唱える登山関係者もいるようです。「単独と言いながらベースキャンプまでスタッフが帯同して無線で指示している」とか、「シェルパがあらかじめルートを作っている」とか、「無酸素というのは下山までボンベを使わないことだ」とか・・・。

ケチを付けたい人には言わせておきましょう。そんなことはどうでもいい。彼のおかげで私たちは、8000メートル級の山の極限状態や頂上での達成感をバーチャル体験でき、今ここに生きていることを実感できるのですから。

Written by ADMIN

8月 10th, 2011 at 4:05 pm

Posted in 未分類